医学博士、宮城教育大学教授であられた岩井�ﾐさんは旧制二高の出身、こよなく山を愛した山男である。

岩井さんの切絵は余技の域を超えた玄人芸術である。山の題材が多い。
旧制二高尚志会９０周年、百周年等々の記念祭のポスターなど何時も岩井さんの手をわずらわした。
岩井さんの切絵に想いを寄せる人は多い。その作品を愛蔵している人も多い。
作品の前に立つと、いつも岩井さんの人間像が重なってくる。


岩井さんが逝って３年に近い。
その遺作展がご子息の手で行われる。
岩井純さんは�ﾐさんの御子息。北大理学部出身の陶磁研究家であると同時に、仙台に築窯されての陶芸作家である。
その窯を六華窯という。雪の華に似た独特の結晶釉を考えだされた作品はまことに優雅である。
いまや精鋭の作家である。その陶芸展を父君�ﾐさんの遺作展と併せて行うという。
なんともうるわしい親と子の絆の展覧会である。
岩井�ﾐさんに心を寄せ、純さんの作陶に望みを嘱する人々にとってこの上もなく美しい展覧会である。

平成５年１１月
東北大学元学長　前宮城県美術館長　　加藤　陸奥雄